最近のコンサートより

10/20(金)

第一回北とぴあ国際音楽祭
オープニング・コンサート

ルネ・ヤーコプスのバッハ ミサ曲ロ短調

王子:北とぴあ・さくらホール 19:00

演奏者
  Cd   ルネ・ヤーコプス
  S    ジビラ・ルーベンス
  Ms   加納悦子
  CT   ニコラス・クラプトン
  T    佐々木正利
  B    スティーヴン・ロバーツ
  Cho  RIAS室内合唱団
  Orch 北とぴあ国際音楽祭祝祭オーケストラ

昨年のプレ音楽祭を経て、今年正式に第一回として開催される 北とぴあ国際音楽祭のオープニング・コンサート。 「ユリシーズの帰郷」や「聖母マリアの夕べの祈り」の 演奏で好評を博したルネ・ヤーコプスの指揮による バッハ最晩年の大曲の演奏で、ほぼ満席の盛況となった。

国内の演奏者とこの音楽祭のために来日した演奏家 によって特別に編成された「北とぴあ国際音楽祭祝祭オーケストラ」と、 ドイツから来日した RIAS室内合唱団による演奏は、 国内の演奏家のみではできない演奏を聴かせてくれたと言えるだろう。

ヤーコプスの演奏は、スローテンポの曲を通常よりも さらに遅く演奏し、細かいアーティキュレーションを積み重ねることで 音楽を組み立てていた。ヤーコプスの指揮する「コンチェルト・ヴォカーレ」の コンサート・マスターも勤めたベルンハルト・フォルクがヤーコプスの意図を 汲み取って第1ヴァイオリン全体をまとめ、また第2ヴァイオリンを まとめる若松夏美がそれに応えるという感じで、いい意味で統制の取れた 演奏であったと思う。ただ木管楽器に比べて弦楽器が強く、 バランスの面で疑問を感じた。弦楽器のメンバーが多すぎたのではないだろうか。

またこの日の演奏は合唱の使い方に大きな特徴があった。 2列に並んだ合唱団を前列と後列に分け、 ホモフォニックな箇所は全体で歌って厚みを出し、 ポリフォニックな箇所では前列だけが歌って音楽の線を見せることで 音楽の中に変化と対比を持たせていた。 このことによる演奏効果は大きく、音楽の幅が広く感じられる好演となったが、 こういう演奏が可能なのもRIAS室内合唱団の技量が あってのことと言えるだろう。

器楽奏者もレヴェルの高い演奏を聴かせてくれたが、 その中にあってもトラヴェルソの有田正広、オーボエの本間正史、 トランペットのフリーデマン・インマーの演奏は、 さすがと思える好演であった。

概ね満足度の高いこのコンサートにあって、残念だったのはソリスト陣。 ソプラノのジビラ・ルーベンス以外はとても満足の出来る演奏ではなかった。 メゾの加納悦子は声は立派だがオペラ丸出しと思える歌い方で場違いな感じ。 バスのスティーヴン・ロバーツも全体をべったり歌う傾向があり、 ヤーコプスの作るアーティキュレーションと合わない印象を受けた。 カウンターテナーとテノールの2人はそろって技量不足。 このソリストの人選がどのように決まったのかは知らないが、 ここにすばらしい歌手が揃えばさらに感動的な名演奏になったのではないか と思うと少し残念だった。

(宮内)


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