ヒリヤード・アンサンブル
Hilliard Ensamble

本グループは1974年結成以来そのしなやかなアーティキュレーションにおいて 男声室内アンサンブルグループとして一世を風靡した。 1990年まで本グループのバリトン兼優秀なる音楽ディレクタである ポール・ヒリヤー の もとで12世紀から現代までの多岐にわたる貴重な演奏を提供してきた。

1990年の彼の退団以降はゴードン・ジョーンズが正式メンバーとなり彼の持つ ヒリヤーより軟らかい声から、アンサンブルのバランスは良くなったものの 音楽ディレクタとして本グループのテナーのジョン・ポッターが 就任したことにより、対象とする音楽は、イギリス的色彩がより濃くなり、 音楽解釈も保守的な感が否めず、魅力は以前より失われてしまったように思われる。

とは言え、基本的に一人1パートという演奏スタイルおよび正確なピッチ、 ノンビブラートで伸びのあるフレージングから繰り出される音楽は、 時代様式という枠を越え、聴くものを彼らの世界へ引き込む力を持ち続けている。 彼らはCDにおいてもペロタン作品集やオケゲムのミサ・プロラチオーヌムを 取り上げるなど名曲を世に紹介する一方で、ペルトなど現代作曲家に委嘱も 行うなどアグレッシヴな音楽活動を展開しており、目が離せない存在である。

余談ではあるが、本グループの命名の由来は、16世紀のミニアチュア画家 ニコラス・ヒリヤードから来ており、決してポール・ヒリヤーから 取ったものでないこと(彼のあだ名ではあったようだが)が 本グループの解説の枕詞のようになっていることを付け加えておく。

(新郷)


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