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音楽資料室中世ルネサンスバロック古典・ロマン派近現代解説項目

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各音律の特色

  • [] 純正律
  • [] ピタゴラス音律
  • [] 中全音律(ミーントーン)
  • [] 平均律

1.純正律(C-durの場合を例とする)

 F   C   G   D   A   E   H
    0   0   0  -SC  0   0 

 注)0:純正5度
   +-:純正5度に対して広いか狭いかを現わす
   SC:シントニックコンマ
→[純正律の算出]

ギリシアのアリストクセノスが考案したといわれる音律。 ローマ以降のヨーロッパでは忘れ去られていたが15世紀後半に 音楽学者ラミスによって再発見され、長三度を協和的に用いようとしていた ヨーロッパの音律に大きな影響を与えた。

長所はとにかく主要三和音が純正(C、F、G)であること であるが、それ以外に長所はないと言ってもいい。

まず順次進行したときの旋律がぎこちない。 これは音階内に大全音と小全音があるからで、 音階を順に弾くとEとAが低く感じられる。

またD-Aの5度が著しく狭く(SC分)、この5度が出てくる だけですでに適用は難しい。

さらに原理的に転調は不可能である(調律換えが必要)。

総じて実用性のほとんどない音律といってもいいだろう。

2.ピタゴラス音律

 C   G   D   A   E   H  Fis Cis  Gis  Es   B   F   C
   0   0   0   0   0   0   0   0   -PC   0   0   0 

 注)0:純正5度
   +-:純正5度に対して広いか狭いかを現わす
   PC:ピタゴラスコンマ
→[ピタゴラス音律の算出]

ギリシアのピタゴラスが考案したといわれる音律。 ローマ以降15世紀後半にいたるまで、ヨーロッパ音楽の 音律として用いられていた。

長所は一つを除いてすべての5度が純正であることが 第一にあげられる。

また、全音と半音の違いが大きいために グレゴリオ聖歌のような単旋律の音楽に独特の美しい 情緒を与えるという長所もある。

問題は長3度が不純であることである。 この音律での長三和音は全く使えないというわけではないが、 非常に緊張感が高い、固い感じの和音になり、いわゆる「解決した」 という感じの安らいだ和音にはならない。

また教会のような良く響く場所では、この音律での長3度が 起こすうなりが目立つために問題となる。

3.中全音律(ミーントーン)

 C    G     D     A     E     H    Fis   Cis   Gis   Es    B     F     C
 -SC/4 -SC/4 -SC/4 -SC/4 -SC/4 -SC/4 -SC/4 -SC/4 wolf -SC/4 -SC/4 -SC/4 

 注)0:純正5度
   +-:純正5度に対して広いか狭いかを現わす
   SC:シントニックコンマ
   wolf:ウルフ(非常に広い5度、後述)

1523年にアーロンが考案した音律。 それまでピタゴラス音律上で作られていたヨーロッパ音楽に 純正な長3度を取り入れるために作られた。 長3度を純正にするために5度が少しずつ狭くなっている。 長所は適応範囲内の長三和音がすべて美しく響くことである。 5度は多少狭いとはいえ、ゆるやかなビートを発生させる程度 なので、純正な長3度とあわせると十分美しく聞こえてくる。 ただ5度を少しずつ狭くした結果、最後には非常に 広い5度(ウルフと呼ばれる)が残ることになり、 転調に制限が加わるという問題がある。

4.平均律

 C      G      D   …    B      F      C
  -PC/12 -PC/12    …     -PC/12 -PC/12

 注)0:純正5度
   +-:純正5度に対して広いか狭いかを現わす
   PC:ピタゴラスコンマ

オクターブを12の半音に等分割した、いま最もスタンダードな音律。 1636年にメルセンヌが発表しているが、それ以前からすでに 先駆的な発表はされていた。フレット楽器では比較的早くから 採用されていたが、鍵盤楽器への採用は19世紀の後半からといわれている。

(宮内)


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